事件をきっかけとした受信料不払い件数の増加は、2005年9月末には約127万件まで増加したものの、増加ペース自体は沈静化に向かっている。
これまでNは、善くも悪しくも、日本的なあいまいさによって成り立ってきたといえよう。
そもそも、受信料を支払わない世帯に対しての罰則規定はなく、かといって放送サービスの対価でもない、といったわかりにくい性格を、受信料は帯びている。
そして、その受信料の使途やNグループ全体としての事業領域の定義もあいまいなものであり、放送の自由とともに事業における裁量がNに委ねられてきたため、新たなサービス展開に当たっては、総務省や新聞協会の意向を鑑みながら、進められてきた感もある。
さらに、総務省、民放およびその他メディアにとっても、Nの緩やかな繁栄が最も望ましい状況であった。
放送に関する技術の研究開発機能と普及推進などの役割を受信料収入に支えられたNに任せながら、業界全体としてその果実を得ることができたからである。
Nの財政状況からも、国民のNに対する厳しい見方からも、今後、このようなあいまいな状況が許容され続けるとは考えにくく、いよいよN、ならびに公共放送の役割を明確にせざるをえなくなってきた。
しかし、問題は、たとえば受信料制度を捨ててNを有料放送化すればいい、といった単純なものではない。
仮に、放送をすべて有料化し、その事業規模が縮小に向かった場合、Nとしては、料金を支払ってくれる消費者に対してサービスを重視せざるをえなくなるであろう。
その結果として、広くあまねく安価に放送サービスを提供する機能、視聴率は低いが公共の福祉の観点から番組を提供する機能、放送における新たなイノベーションを長期的な視野から醸成する研究開発機能などを、Nが保ち続けることは困難になる可能性が高い。
国として、放送業界として、これらの機能をどのように担保するかということまで見据えた議論がなされる必要がある。
したがって、国民にとって、引き続き提供される価値のある公共的機能、すなわち公共放送の役割を明確にすることなく、制度や組織形態の変更ありきの検討は慎むべきである。
逆に、現行程度の規模で、公共放送維持の財務基盤を担保するとするならば、N本体への監視はもちろんのこと、グループ会社に対するガバナンスモニタリング制度をどのように確立するかを明確にすることが必須である。
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